未来ビジネス研究部の発足後、今年は予定通りの勉強会実施ができておりませんでしたが、記念すべき第一回目の企業視察勉強会を開催することができました。また、コロナ禍であることを機会にオンラインと現地視察を同時に行うハイブリッド開催に挑戦させて頂きました。
このような環境においても遠方からご参加頂いた皆様、視察と講演さらにはハイブリッド視察を快く受け入れて下さった企業様、そしてご多用の中で企画アレンジを動いて下さった部員の皆様、本当に有り難うございました。

<ハイブリッド視察の様子:現地とオンライン同時開催>

時代を創る新時代の組織と人材教育
今回訪問をさせて頂いたのは、株式会社吉村の焼津工場です。本社は東京ですが、静岡県創業の当社の実業は静岡県焼津工場を中心に行われています。
お茶袋の印刷を生業として1932年に創業。現在では多岐にわたる商品パッケージの印刷を軸に、230名の社員が業種に捕らわれない働き方を実践されています。
お茶屋店舗がまだ日本全国に多く存在していた当時は、販売に使われていたお茶袋は紙でした。その後、フィルム素材が食品パッケージ等に使われるようになり、保存機能が向上すると、前社長である2代目は、お茶もお茶屋で買う時代ではなくなり、フィルム袋に入ったお茶が全国に流通するようになると考えました。すると世界で初めてフィルム印刷の機械を導入し、お茶業界を代表する企業へと急成長したのです。
しかし、飲料の消費者志向はコーヒーを好むようになり、日本茶文化はあまり親しまれなくなってきます。一方で、東日本大震災直後に、静岡県の茶畑でセシウムが検出されたことをきっかけに、日本茶の購買市場が一切止まる事態を経験されます。
仕事が激減し、従業員の不満が高まると「俺たちは袋屋なんだからお茶にこだわらず飴でもなんでもパッケージの仕事をとればいいだろう」といった声があがったそうです。以降、お茶業界のトップリーダーであった吉村は、葛藤の中、商品のパッケージ印刷に業態をシフトしていきます。現社長の橋本久美子社長は、当時お茶にこだわってきた会社の風土や理念を改め、会社として再出発することを決意します。「想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します。」
これまで、BtoBで取引を行ってきた当社ですが、現在では印刷業だけに留まらず、商品が消費者に届くための仕掛け、マーケティング、その商品を販売するための不随商品の開発及び販売促進も、取引先企業と二人三脚で取り組んでおられます。そして現在も日本茶文化、お茶市場の活性化のため、様々な仕掛けをされています。
創業から90年、市場環境に適応しながら、理念経営に取り組まれてきた当社から様々な取り組みを学ばせて頂きました。

「理屈」では納得はできるが、人の心を動かすのは「ストーリー」
舞台作家のご経験から「ストーリー」にこだわる橋本社長は、230名いる社員とどう向き合うか、どのように伝えるかを日々試行錯誤されています。社員それぞれに「ストーリー」があるからこそ、全ての社員の名前を記憶しており、漢字まで完璧に書けるとのこと。また社員にわかりやく伝えるために「ひらがな経営」を実践されており、難しい言葉は使わず、誰もが解る表現での説明や広報を徹底されています。
今回の会社見学会は、社員の方々が中心となってワークショップや場仕切りを行いました。オンラインでの進行役、現地での進行役、そして各部門のプレゼンテーションでは、新卒社員が行う場面もあり、それぞれが役割をもって10名ほどのチームで開催されました。驚かされたのは、各ワークショップ、各プレゼンテーションで、各社員が、開始前に「目的」と「目標」を必ず発表されることです。
全ての業務に対して、「目的」と「目標」を明確にして取り組むことで、各人の行動が意味をもち、個々の「ストーリー」になっていく。この積み重ねが会社の「ストーリー」となっていく。さらにはこれらが経営理念につながっていく。こうして社員の考える力が養われ、強いチームワークを発揮しているのだなと感じました。

<一つ一つのプレゼン項目にも、「目的」と「目標」の設定がされています。>

当社では、日本茶推進事業を一つの事業として取り組まれています。そこには「お茶のパッケージを売っている」感覚はありません。社員から出てくる企画は、フィルターインボトル等の商品やお菓子の開発。「茶袋を売るための舞台をつくる」ことが会社の使命となっているのです。

<机には従業員のアイデアで生まれたフィルターインボトルが。コロナ予防で机を仕切るフィルターは、フィルム廃材を再利用した手作り。>

橋本社長が経営勉強会で、商売について次のような言葉を聞かれたそうです。「モノを売ろうとすると、モノが売れないとモノのせいにする。しかしモノを買うのはヒトだ。このヒトが買いたくなるためにどのようにするかが商売だ。」とのこと。商売と同じように、社員のやる気や取引先とのパートナーシップを高めているのは、「ストーリー」。これを深めていく細かい仕掛けが随所に感じられる勉強会でした。

<日本茶販売を促進するアイデアの数々。商品ではなく舞台をつくる仕事。>

アンダーコロナにおけるサービス業の突破口
創業45年を迎えるなすびグループは、静岡市内を中心に飲食店を展開している企業です。先代が17坪25席の和食店から始めた飲食業を、先代のご子息が承継し、兄弟で経営をされています。大手飲料メーカーで修行後、徹底した地元マーケティング(利用目的分析)を行い、現在では17店舗、従業員数470名の規模まで成長させました。3名の営業社員を抱え、団体会食の営業やニーズ分析を現在も行っているそうです。
今では静岡県民では知らない人がいないほどまでになり、順調に成長を続けている中、新型コロナによる外食規制を経験することとなりました。4月、5月の2ヶ月間の売上は前年対比で5%だったそうです。

<藤田専務による講演の様子>

なすびグループは、休業要請の出る4月7日から全店舗の営業休止を決断しました。多くの店舗が時間短縮やテイクアウトなど工夫をしながら営業をしている中、なすびグループは外食営業を2ヶ月間休止しました。
決断の根底には、「フィロソフィ(行動理念)」がありました。お客様はもちろん、働く従業員の「安全」を最優先に考えたそうです。また静岡の地場に強く根差したフィロソフィは、食材を仕入れる取引先にまで思慮をめぐらせ、仕入れた食材を集め1店舗を解放し、食材のマーケットを開いていたそうです。現在は一部の店舗を営業させていますが、同業他社はライバルではなく、地元産業を盛り上げる時代の流れを共に戦う仲間として捉え、自店に訪れたお客様へ、はしご消費を推薦しているほど。義理と人情に溢れたフィロソフィは、社員にも強い使命感を興させているように感じました。また、「おもてなし」を提供するために、従業員に一流体験をさせることをしているそうで、社員旅行や外食体験に経費を惜しまずに使っているとのこと。こうした取り組みにも会社と社員のベクトルを合わせる工夫が感じられました。
講演後、和食店「無庵(むあん)」にて静岡食材をふんだんに使った会席料理を堪能しました。

<参加者との記念撮影>

今回は、静岡県にて理念経営を実践されている2社を訪問視察させて頂きました。

次回は、9月25日(金)に広島県の八天堂を視察します。今後の勉強会でも、学び、実践し、気付きの多い機会にしていければ幸いです。

<次回お申し込みはこちら> http://ur2.link/ilZw