~顧客を創造するマーケティング~(株式会社八天堂)

 未来ビジネス研究部発足後、コロナ禍において勉強会を開催させて頂き、オンラインの活用と感染を防ぐ工夫をしながら現地視察を行ってまいりました。今回もこれまでの反省を活かしながらオンラインと現地視察を同時に行うハイブリッドにて開催をさせて頂きました。
 このような環境の中、視察と講演、同時進行でオンライン視察の開催まで快く受け入れて下さった企業様、遠方からご参加頂いた皆様、そしてご多用の中で企画の提案からセッティングまで動いて下さった部員の皆様、本当に有難うございました。

 

<ハイブリッド視察の様子:現地とオンライン同時開催>

 

広島三原から全国へ、八天堂のくりーむパンができるまで

 今回訪問させて頂いたのは、株式会社八天堂の広島みはら臨空工場(広島空港前)です。販売店舗は全国にありますが、くりーむパンは全てこの工房で創っています。

 八天堂は、昭和8年に初代代表が広島三原に和菓子屋として興したお店です。アメリカに端を発した大恐慌の影響を受けて暮らしが苦しくなっていく中、「甘くておいしい和菓子を通じて、少しでも周りの人たちを元気づけたい」という想いで開いたお店です。
 そんな初代代表の遺志を継いだのが、現代表の森光社長のお父様、二代目代表です。二代目は発展し、変わってゆく日本と同じように、八天堂に「洋菓子」を取り入れました。
 そして今、三代目となる、森光孝雅社長が初代の「和」と二代目の「洋」を融合した、新しい八天堂を作っています。

 かつては無理な店舗拡大で倒産危機に陥りましたが、無添加パン卸売事業で経営を立て直し、その後100種類あったパンを1種類に絞って「くりーむパン」の開発販売に取り組みました。
 2009年スイーツパン専門店としてくりーむパン1品で東京進出を果たし、駅ナカや百貨店を中心とした出店で、スイーツパンの手土産市場を確立しました。
 今後はアライアンスやコラボレーションによる新商品の開発やくりーむパンを軸とした食のテーマパークの展開を計画など、商品開発、ビジネスモデル開発でイノベーションを起こし続けています。
 同時に人を大切にする会社として経営理念の「良い品」「良い人」「良い会社つくり」を大切にし、良い品つくりから良い人つくりへ、良い人つくりから良い会社を作っています。

 

26歳でパン屋を開業、急拡大からの急転落

 神戸の名店フロイドリーブで修業をした後、26歳のときに三原市に戻り、事業計画も持たずに開業資金の融資を受けようとするほど経営についてなにも知らない状態で開業しました。
 順調に売り上げを伸ばし、開業10年で広島県内に13店舗まで拡大。しかし、さらに店舗を拡大していく中、新店舗の店長となる社員から突然何の相談もなく辞意を伝えられました。その彼の転職先はなんと最大のライバル店でした。また、既存店の店長たちも次々と辞めていき、弁護士から民事再生を提案されるまで経営状況が悪化しました。

 ある店舗の店長から、新入社員のひとりと急に連絡つかなくなったと報告がありました。その店舗の労務環境は、朝早いし夜は遅い、週1日の休みさえも取れないという状況に陥っていました。
 慌ててその社員の実家へ駆けつけると、親御さんから「うちの娘は子どもの頃からパン屋になることが夢で、入社が決まったときには家族みんなで喜びました。なのに、実際に入社したらとんでもない労働環境で働かされて。そのせいでうちの娘は家の外に一歩も出られなくなってしまった」と叱責され、森光社長は頭をあげることができなかったそうです。

 

経営理念

良い品 良い人 良い会社つくり

 

 

信条(クレド)

八天堂は社員のために
お品はお客様のために
利益は未来のために

 

<社内廊下に経営理念・信条(クレド)を掲げている>

 この時初めて本気で財務諸表に目を通します。それまでのどんぶり勘定を見直して数字を明確にし、質・量ともに高い投資と回収を連続して行う経営を目指すようになります。信条にもある「利益は未来のために」が確立していきます。

 経営が苦しい中で、精神的にも追い詰められていた森光社長を助けたのは家族でした。
 倒産するかもしれない、それどころか破産までするかもしれない状況で、弟さんから大金を差し出されたのです。弟さんに深く感謝をされたのはもちろんの事でしたが、それと同時に、こんな立派な弟さんを育てあげたお父さんにも心の底から感謝をしました。また、祖父が創業をし、長年コツコツと地道に経営してきた和洋菓子屋をやめてまでつくったパン屋さんをつぶすかもしれない中でも森光社長を思いやるお父さんに対して、心から感謝の念を感じ、37歳にして親のありがたみを感じたそうです。
 家族の愛情を感じる中で森光社長の中で何かが大きく変化していくのを感じ、先が見えない暗中模索の状況でしたが、今度こそ「社員のために生きていくんだ」と心の中で誓いました。

ここから再建のきっかけができ、この時、現在の信条(クレド)・経営理念ができたそうです。

 利益を作り上げる企業は数字が明確で質・量ともに高い投資と回収を連続して行う経営をし、経営理念を掲げて全うしている企業である。この二つの条件が利益を作りあげる事ができる企業であると力強く伝える姿からは経営理念・信条(クレド)への並々ならぬ想いがあることが強く伝わってきます。

<工場見学の様子>

 

「スタンダード」×「スタンダード」

 家族や社員の力を借りながら心機一転再建していくために新商品の開発をしていました。
 新商品の開発は奇を衒うのではなく、スタンダードとスタンダードとを新しい形・方法で組み合わせることによってイノベーションを起こすという森光社長の考えのもと、菓子パンのスタンダードである「クリームパン」と食べ物の美味しさの要素のスタンダードである「口どけ」を組み合わせることによりくりーむパンを開発します。
 また、イノベーションは商品開発だけでなく、ビジネスモデルも確立する事で成しえるとのお考えから、販売面ではパンというカテゴリーにこだわらず「スイーツ」というジャンルで販売をする。さらには、スイーツパンの手土産ジャンルという新たな食文化の開拓をしていきました。

 当時100種類以上あった商品に対して「選択と集中」を覚悟をもって実際のビジネスで実行し、くりーむパンに絞っての販売していくことを決意しました。

 こうした新たな商品開発とビジネスモデルの確立によってイノベーションを起こし、新たな「スタンダード」を作り上げていったのです。

 

<八天堂BOOKを持ちながら熱く語る森光社長>

 現在では人づくりのため、社員の育成にも積極的です。理念の浸透の為に八天堂BOOK(クレド帳)を社員全員に配布し、毎日かかさず毎朝に、社長自ら八天堂BOOKについて15分程の音声を全社員に向けて発信をしているとの事です。

 特に採用に力をいれており、社長自ら面接をし、そのほとんどが新卒採用だそうです。少しでも同じ考え方を持った人を採用したいという想いから、一泊二日、三泊四日、五泊六日の三段階の合宿を採用活動に用いているそうです。

 森光社長の経営理念・信条(クレド)への熱い想いとこうした取り組みによって会社と社員の方の方向性のすり合わせを日々行っているという事が感じられました。

 

<八天堂カフェリエ前にて集合写真>

 今回は、広島県にて理念経営を実践されている株式会社八天堂様を訪問視察させて頂きました。ありがとうございました。

 次回は、11月27日(金)に岐阜県の日本ウエストン株式会社を視察します。今後の勉強会でも、学び、実践し、気付きの多い機会にしていければ幸いです。

<次回お申し込みはこちら>

https://bit.ly/3jlac3C