第5回未来ビジネス研究部勉強会「三協興産株式会社(ATグループ)」

神奈川県川崎市にある三協興産株式会社(ATグループ)を訪問視察して参りました。新型コロナ感染防止を考慮し、参加者の皆様には企業訪問前に抗原検査(唾液検査)を受けて頂くなどして開催をさせて頂きました。

今回、このような状況下にも関わらず視察を引き受けて下さった三協興産の皆様、またご参加頂いた皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

ATグループは、群馬県前橋市で廃棄物の収集運搬を手掛ける株式会社アドバンティク・レヒュース「Advanced technology(先進的な技術)+Refuse(廃棄物)」を中心に、2016年より業務提携やM&Aを通して展開を行ってきました。現在、グループは4つの会社で組織され、合計で年商77億円、グループ従業員は約240名が在籍されています。

今回訪問させて頂いた三協興産株式会社は、1980年に設立され、産業廃棄物処理のトータルプランニングから収集運搬、中間処理、プラントメンテナンスを行っています。収運業に加え資源リサイクル工場を構え、食品リサイクル機運や除染作業等幅広い環境事業も首都圏中心に展開しています。「社員とその家族のための会社」として坂本光司氏の著書「日本で一番大切にしたい会社」でも紹介されているグループ企業です。

 

代表取締役社長 堀切勇真氏 講演の様子

 

全社員の幸せを通して、世の中の貢献(ありがとう)の輪を広げ、幸福総和 №1企業を創る

「心の経営」と題して、経営理念を中心とした「人を大切にする経営」についてグループ代表の堀切勇真社長よりご講演を頂きました。

創業から37年、先代から取り組まれてきた経営理念を引き継ぎ、2代目である現社長が、「日本でいちばん大切にしたい会社」に共感して、新たに言葉を紡ぎつくった経営理念です。

そして、「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない」をグループのPhilosophy(信条・哲学)に掲げ、会社が存続する意義に“社員とその家族の幸せ”を第一に定義しています。そして「人」を一番の財産と考え、「心」の伴う経営をし、どんなに売上が上がっても、「人として正しいこと」ができなければ会社の未来はないと考えます。一人ひとりが自律し、日々何かしらの努力をし、人格を高めていくことを実践されています。

従業員とその家族に対しては、120%の想いで取り組んでおられます。例えば、昨年のコロナによる持続化給付金に先駆けて、会社独自の給付金10万円を取締役以外の全社員に給付し、「コロナ共存準備金」として社員の支援をしました。“お金”を給付するだけではなく、“お金”に想いを込めることが非常に重要だと。有事の時にどのような決断をするかという経営者としての覚悟と姿勢を見せることが全て;私利私欲ではなく、無私利他だと。「コロナ共存準備金」には手紙を添えて社長の想いを伝えました。

顧客第一主義ではなく、その顧客の満足度を創出している従業員の幸福を追求するのが会社の使命。この具体的な行動が、社員に心理的な安心感を与え、その上にチャレンジ精神が生まれると信じて経営をされています。売上規模1兆円の企業であっても、途中でリタイアしてしまう従業員がいたり、経営状況が悪化してしまう取引先があれば、幸福総和は叶えられないのです。

経営は、やり方ではなく、在り方。信じる道や行動が偽善と言われようとも、「やらない善よりやる偽善;死ぬまで続ければ“義善”になる」と堀切社長自らが実践して、社員の模範を生きているように感じました。

社員への約束

・家族も含めた物心両面の豊かさを追求します。
・安心安全快適な環境を整え、人命を何より優先します。
・多様な価値観や個性を尊重し、尊厳や価値を守ります。
・全てのものを分かち合い、パートナーとして遇します。
・公明正大を旨とし、真に平等(機会平等/評価公正)を保ちます。
・適材適所を考え抜き、功禄能職を与えます。
・意欲や能力を開放させ、成長できるステージを用意します。
・失敗してもいい、前向きに挑戦した者を勇者と認めます。
・惜しみなく称賛を伝え、共に成功を祝います。
・末広がりの幸福を永続的に提供できる事業基盤を築きます。

The One & Only HERO

経営理念を元にどこに向かっていくのか。これがグループのビジョンです。常に正義を貫き、周囲を正しい方向へ導き、1000人のHERO(ヒーロー)を仲間に迎え、地球環境を未来永劫守り続ける唯一無二のHERO;企業グループを目指しています。

ビジョンに売上規模はなく、従業員が「人」として成長していくことを掲げていました。「人」が財産ということが表現されている素晴らしいビジョンだと感じました。

心の経営指標を元に、具体的に取り組まれている内容です。

・人本経営→人を財産とし人にフォーカスした経営
・信義経営→誰に対しても勇気を持って信義を貫く経営
・衆知経営→社員の叡智を結集し全員参加型の掛け算経営
・バランス経営→創造的破壊と承継のバランスの良い経営
・脱力経営→足るを知り自然体で身の丈に合った経営
・自責経営→何事も自らに責を問い、言い訳しない経営
・年輪経営→急成長ではなく年々少しずつ強く太くなる経営

「1 on 1」

ATグループは各社の給料日が異なります。堀切社長は給料日に、グループに在籍している社員240名全員一人ひとりと面談をしています。最近よく出来たこと、会社への要望、悩み事など、「社員のことをもっと知りたい、社長のことを知ってほしい」との社員への熱い想いを込めて全員とコミュニケーションをとっているそうです。また、手紙を毎月この機会に手渡ししています。そこには業績の中間報告と、会社の方向性、そして社長が日々感じ思うことが書かれています。あらゆる上司を飛び越えて、社員と社長が1対1で話しをすることが良いのかどうかと葛藤する部分はあるものの、どんな時も社長と社員とが意見を交わせる風土を理想とされています。

「一日1Kカード」

一日1Kカードとは、“考えたこと”、 “気付いたこと”、“改善案” 、“感謝の気持ち”、などを社員は必ず毎日1枚書いて提出するようにしています。その数はなんと年間2万枚以上にも及ぶほど。常に考える力を発揮し、自分と向き合って、その時の気持ちや思うことを言葉にすることで、会社のためにも社員にためにもプラスにすることができます。

 

「0.5%」

グループの直近の離職率です。従業員の満足度が表れている数字ですが、社長はこの数字にこだわることが満足度を継続していくものではないと考えます。社員が成長していくことが大前提として、価値観にそぐわないものがあった時、周囲に悪い影響が及ぶものとも考え、場合によっては辞めてもらうことも本人のためと。ここでも社員が心を一つにしていくことの哲学を感じ取ることができました。

「8,232千円」

当社の平均年収です。業界平均給与5,000千円のところ1.6倍の報酬を惜しみなく支払っています。これが社員の一つのモチベーションにもなっています。

12★日

年間の休みの数を表す数字です。年間120日以上の休暇制度は、産廃処理業界では平均よりも多い休日数となっております。社内では外国人の技能実習生も働いていますが、正社員同様にしっかり休暇を取り、プライベートの充実も図っているそうです。

「53名 」

グループ会社のアドバンティク・レヒュースでは、2013年に持株会を立ち上げ、社員に40%の株式を保有させています。それから7年、三協興産㈱を含めグループ全体として社員が自社株を保有する持株会の設立に至りました。現在では53名の社員が合計で時価1億円以上の株式を保有しています。堀切社長は、「一人でも多くの社員に株式を保有してほしい。それでこそ本当の意味での社員のための会社になる。社員の頑張りが直接企業価値に反映され経営意識を持てる喜びを形にしました」といいます。

工場見学の様子
障がい者の社員が作業している様子

同社は地域との連携を取りながら、4つの施設より毎週月曜日から金曜日まで、障がいのある方が作業できる場所を提供し、10:00~15:00(1時間の休憩あり)で働いて頂いています。作業内容は主に飲料容器を素材別に分別する仕事です。現場には指導者が付いており、モチベーション向上のために毎月のMVPを決め、半年毎に優勝者を選出し賞品を出したりと、楽しく働ける工夫をされています。

自然とコミュニケーションが生まれる場を作りたい

同社は昨年にオフィスの改装を行い、堀切社長の「自然とコミュニケーションが生まれる場を作りたい」という想いで、社長や役員のための会社ではなく、従業員のための空間づくりをしたい」と、社長室を無くし、社員食堂のスペースを広げました。社員主導でアイデアを出し合い、フリースペースに「無料お菓子」「社食サービス」「完全分煙室」などを設けました。壁には社員たちの座右の銘などが貼り出されていました。

社内のフリースペースにて 視察の様子
社員食堂の社食サービスコーナー(全品200円)
壁に書き込まれている「座右の銘」と無料お菓子コーナー

 

堀切社長のお人柄の素晴らしさと、社員「人」への熱い想いが伝わり、またそれを実際に感じることができる視察となりました。社内では、社員同士が朗らかに働く姿や、社長が社員に積極的に話しかけるような光景も見られ、役職を越えたフラットな人間関係や風通しの良さを感じました。 勉強会後は、グループディスカッションや質疑応答の時間も設け、それぞれの意見や感想を交わしながら、自社への取り込みについても考察しました。また後日に、オンラインにて、視察勉強会後のフォローアップを開催します。今回の学び、気付きを今後に活かせるようさらに深堀りをしていきます。

この度の視察勉強会にご協力頂いた皆様、ご参加頂いた皆様に重ねてお礼を申し上げます。

有り難うございました。

勉強会後のディスカッションの様子
有り難うございました。

 

 

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